Jappers

このエントリーをはてなブックマークに追加

JAPPERS “Imaginary Friend”

2014 (DEAD FUNNY)

ミシシッピやシカゴのブルース、ナッシュビルのカントリー、LAメタル、シアトルのグランジ、リバプールのマージービート、マンチェスター・ムーヴメント、渋谷系、津軽民謡etc…地名から連想される音楽、シーンは多々あるけど、高幡不動……?!そう、高幡不動なのである。正直何も浮かばないんだけど、もしかしたらとてつもなくオルタナティブな街なのか?強力な磁場が働いてるのか?ニューヨークとナッシュビル・テイストな街なのか?どっちも行ったことないけど。そんな妄想が膨らんでしまうのは、この街で結成されたJAPPERSの1stフル・アルバム『Imaginary Friend』のせい。これがとてつもない快作だから。何なんだ?この洋楽感は。纏った空気がもうあっちのソレ。高幡不動恐るべし。

こだわりのオール・セルフ・プロデュースによって制作された今作は、ひとことで言えば色鮮やかというよりモノクロ。でもその色彩は同じ曇り空がひとつもないように、その実とてもカラフル。限られた絵の具でこれだけ豊かな表現をするバンドはそうそういない。まさにグラデーションの妙。アコギのストロークからゆったりとその世界に引き込まれる1曲目「The City」、ヴェルヴェッツ的な「Keep On」、展開が読めない「I Wanna Know That」の中毒性にやられたら、スチール・ギターが心地よい「Golden Stone」から「Leave Them All Behind」までフォーキーでカントリー・タッチな曲が続き、ラスト「House On The Wheel」はまるで『Imaginary Friend』という映画のエンドロール。聴いてるうちに、行ったことも見たこともないはずの穏やかな風景が脳内で広がってくる。本当に表情豊かな音楽を奏でるバンドだ。キラキラなのにザラついてたり、今っぽいのにいなたかったり。音響系で実験的な要素もあるのにナチュラルで有機的なのは、全ての楽曲の根底に生身のプレイの熱量を感じるから。

USオルタナ・カントリーの名盤、Lambchopの『Nixon』から14年、脈々と受け継がれてきたルーツとその血脈の先にある”今”を鳴らすJAPPERS。彼らの音は飄々と垣根も世代も国境も飛び越える。

<森ヒロユキ@BOYS ON THE BEACH>


<トラックリスト>
01. The City
02. Keep On
03. I Wanna Know That
04. Golden Stone
05. Shelter From The Sun
06. Railway
07. Leave Them All Behind
08. Passing Phrases
09. For Tomorrow
10. House On The Wheel