Kjarr

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KJARR "Kjarr"

2012(SELF) ¥1,470(taxin)

アイスランドのロックバンド Ampopのメンバーで、同じくアイスランドのLeavesというバンドではキーボードを担当しているSSW+マルチ奏者 Kjartan F. Olafssonによる、サイケPOPなソロプロジェクト。レイキャビックやグラスゴーでのレコーディングを含め、約3年をかけてつくられたデビュー作が本作です。ピアノ、ハーモニウム、ウーリッツァー、テルミン、オムニコード、ギター、ベース、パーカッションなど、多くの楽器を自身で演奏。

アルバムのオープニングは、スペーシームードのSEがスパイスになっているワルツ風の「○○○○」(waiting for summerという意味だそうです)。すでにこの時点でKjarrの魔法は効力を発揮し始め、アナタのカラダは地面からわずかに浮き上がったような状態に。

次に現れるのは、イントロのピアノがZombiesの「This Will Be Our Year」を彷彿とさせる「Lottery」。Ray Davis系統の味わい深い歌い回しと小粋なミュートトランペットがペーソスを漂わせるスローパートと、古き良きブロードウェイミュージカルのようにジャジーで軽妙な展開部が交互に繰り返されます。そして再びゆったりとしたワルツ曲「The Shelf」。どこからともなく現れてフワフワと浮かんでいるようなコーラスにうっとりしていると、曲の終盤にはホーンの和声が幻惑的なオーケストラルポップに。ここまで聴いてしまったアナタのココロは、慌ただしい現実世界から遠く遠く離れた場所にいるはず。

誤解を恐れずに書くと、鮮明な輪郭を持つストレートなPOPソングは皆無です。そこにあるのは、白昼夢の中をたゆたうような陶酔感に満ちた世界。Beach Boys、Beatles(もちろん後期)、Pink Floyd、ELO、High Llamas、Wondermints、Paul Steelなどなど、凄いメンツが引き合いに出されていますが、まったく異議なし。おっしゃる通りでございます。空気がキーンと冷え切った冬の夜にも、照りつける日差しを避けてまどろむ夏の昼下がりにも聴きたい、音の合法ドラッグ。<Miyuki Kimura>



1. Beðið eftir sumrinu
2. Lottery
3. The Shelf
4. Quantum Leap
5. Rest
6. Confide In You
7. Siglt í kaf
8. Sunny
9. Harvest